チャンクリーディングとは
チャンクリーディングとは、英文にスラッシュを入れて区切ったものを使って音読などの活動を行うトレーニング方法です。
スラッシュを入れるのは、英文の意味の切れ目になっているところです。たとえば、前置詞や関係代名詞、接続詞の前など。
これによってできた意味のかたまりのことを「チャンク(chunk)」、「センスグループ(sense group)」などと呼びます。
スラッシュリーディングと違うところは、スラッシュを入れるだけでなく、通常は改行までして、よりかたまりを強調する点にあります。
チャンクリーディングの方法
下記のような英文をみてみましょう。アメリカのオバマ大統領の退任スピーチから抜粋した文章です。この英文をみて、返り読みをせず、頭から瞬時に意味がとれるでしょうか?
My fellow Americans, it has been the honor of my life to serve you. I won’t stop; in fact, I will be right there with you, as a citizen, for all my remaining days. But for now, whether you are young or whether you’re young at heart, I do have one final ask of you as your president — the same thing I asked when you took a chance on me eight years ago.
これをチャンクに分けると下記のようになります。チャンクごとに内容を頭の中に思い描くようにしてみてください。
My fellow Americans / 同志であるアメリカ国民の皆さん
it has been the honor of my life / 私の人生にとって名誉なことだった
to serve you. // 皆さんに仕えることは
I won’t stop; // 私は止めません
in fact, / 実際、
I will be right there with you, / 皆さんと共にいるつもりです
as a citizen, / 一市民として
for all my remaining days. // 私の残りの人生の全てにおいて
But for now, / しかしとりあえず
whether you are young / 皆さんが若いか
or whether you’re young at heart, / それとも精神的に若いかはともかく
I do have one final ask of you / 皆さんに最後のお願いがあります
as your president / 大統領として
— the same thing I asked / お願いしたことと同じことを
when you took a chance on me / 私にチャンスを与えてくれたときに
eight years ago.// 8年前に
元のままの英文だと、意味の切れ目がわからなくてうまく意味がとれない人でも、チャンクごとに意味を頭の中に思い描いていくようにすると、よりスムーズに内容が理解できるのではないでしょうか?
だいたい脳のワーキングメモリーは、一気に5~9語くらいのチャンクまでなら処理できるとされています。自分でチャンクに区切るときには、これを意識してみるとよいでしょう。
チャンクリーディングの効果
このトレーニングの最大の利点は、英語をそのままの語順で、頭から理解していくことができるという点です。
日本語を母語とする私達は、どうしても一文すべてを綺麗な日本語に訳して理解しようとしてしまいます。そうすると日本語と英語では語順が全然違いますから、どうしても後ろから前に戻って読み進めていくことになってしまいます。当然、これでは読むスピードは上がりませんよね。
このような読み方を続けていると、リスニングの理解にも影響が出てきます。リスニングをするときのことを考えてみてください。音は次から次へと流れて、消えていってしまいます。後ろから前に訳して理解する、なんてことは絶対できませんよね? 英文を頭から、チャンク単位で理解していくことは、リスニングでも必要なスキルであることがわかります。
あらかじめチャンクに分けられた英文を、サイトトランスレーション(別記事参照)したり、音読をすることによって、どこに英文の意味の切れ目があるのかを見つけることができるようになってきます。
音読をする際に重要なのは、かたまりを意識し、リズム良く読むこと、そして、必ずそのチャンクの意味内容を思い浮かべるようにすることです。日本語訳を思い浮かべる必要はありません。その情景を思い描いたり、その文章の書き手・話し手になったつもりで、相手に内容を伝えようと意識して音読することが重要です。
このようにしてチャンクを意識することができると、英文を黙読する際にも自然と文の切れ目がリズムでつかめるようになってきます。リーディングスピードは格段に向上するでしょう。
また、リスニングの際にも、英語を日本語に訳すのではなく、内容を思い描くようにしながら理解していくことができるようになるでしょう。
シドニー・マッコリー大学で博士号(言語学)取得。大阪府立高校及び千里国際学園で英語教諭を務めた後、福井医科大学や大阪府立大学を経て、立命館大学大学院・言語教育情報研究科・教授。伝統的な言語手法に加えて脳イメージング手法も併用することで、バイリンガルや日本人英語学習者対象に母語や第2言語習得・喪失に関する基礎研究に従事。その研究成果を英語教育現場に還元する応用研究も行っている。