目次
- はじめに
- 概要
- 試験日
- 試験範囲・試験時間・解答形式
- 配点
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 評論
- 現古融合文
- 近代文語文
- 古文
- その他
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書・問題集紹介(現代文・近代文語文)
- 土台を固めよう
- 問題を解いてみよう
- 記述問題にチャレンジ
- 過去問演習
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書・問題集紹介(古文・現古融合文)
- 基礎を固めよう
- 問題演習をしよう
- 過去問演習
1. はじめに
一橋大学入試問題の国語に関する傾向と対策を解説します。本大学の入試問題の傾向としてはその特徴的な出題形式が挙げられます。次の2つです:
①古文関連問題
②要約問題(現代文)
古文関連問題とは、一般的な古文からの出題の他に、近代文語文や現古融合文と呼ばれる種類の文章からの出題のことを指します。あらゆる文章を読み、自分の言葉でまとめられるかどうかという、総合的な国語力が求められるのです。
入試問題に出題される文章の難易度はそれほど高くありません。傾向として古い年代の文章からの出題が多いこともあり、言い回しに癖のある文章もありますが、センターレベルの文章の読解ができれば、内容理解に支障はありません。ただし、少ない字数(30~40字以内)での記述問題が多いため、要素を漏れなく、しかも簡潔にまとめることが求められます。高い表現力と要約力が求められるので、難易度は東京大学や京都大学のような最難関に次ぐ、高いレベルとなっています。
入試問題全体をみると、難易度がそれなりに高いにもかかわらず国語の配点が低いため、優先度を低く見てしまう受験生が多いようです。ですが、配点が低くても100点以上ですし、この勉強を通して培われる国語力、特に要約力は他の科目の勉強においても必ず役に立ちます。また、難易度が高いと言っても、きちんと取り組めば高得点を狙えます。しっかりとした対策をとり、他の受験生と差をつけましょう。
それでは、詳しく解説していきます。
2. 概要
2.1. 試験日
2月25日
1限:国語、2限:数学
2月26日
1限:外国語、2限:社会(世界史、日本史、地理、倫理・政経、ビジネス基礎から1科目選択,倫理と政治・経済は合わせて1科目)
2.2. 試験範囲・試験時間・解答形式
(試験範囲)
国語総合
(試験時間)
100分
(解答形式)
全問記述式
2.3. 配点
180点
社会学部
125点
商学部
110点
経済学部・商学部
2.4.出題の傾向と特徴(概要)
入試問題国語の出題の傾向について解説していきます。全体としては、現代文から2題、古文関連文から1題の出題です。大問1で漢字(5題)と語句意味解説(2題)が、また、大問3は例年要約問題(200字以内)が出題されます。それ以外は、内容説明問題や現代語訳など、一般的な出題となります。
小問数は大問1が4問、大問2が3問、大問3が1問というのが一般的です。大問1と大問2に関しては漢字の問題・語句意味解説問題を除き、小問1題あたりの記述量は30~100字、全体でおよそ500字程度となります。これは、一般的な国公立の入試問題と同程度かそれ以下のものとなります。解答に必要な要素を漏らさず、かつ少ない字数に納めなければならないので、高いレベルの要約力・表現力が求められます。
出題される文章は、現代文では1980年代以前のもの、古文関連では江戸時代後期~昭和にかけての出典が多いなど、比較的古い文章からの出題が多いのですが、近年は最近発表された文章からの出題も見られるようになっています。そのため、幅広い年代の文章を読めるようになっておく必要があります。なお、現代文・古文関連問わず、小説からの出題がほとんどないのも特徴です。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 評論
現代文の問題はほとんどが評論文からの出題で、ジャンルも近代論・言語論・芸術論など、多岐にわたっています。比較的古い文章からの出題が目立ちますが、近年は試験実施年度内に発表された文章からの出題が続いています。年代においても広い範囲からの出題となります。
文量は、B5判で2~4ページと、特に長いというわけではありませんが、要約問題(大問3)では5ページ程度の文章も出ており、文章を早く読む練習はしておくべきでしょう。演習時には時間を測りながら取り組むと効果的です。
問題の多くは、傍線部の内容説明の問題です。ただ、一橋大学では、「筆者の主張を踏まえながら」や「文章の全体の流れを踏まえて」など、要約力を求めてきたり、自分の言葉で表現することを求められるケースが非常に多く見られます。大問3で要約問題を出題していることからもわかるように、高い要約力を受験生に求めてきます。日頃から、演習時に要約をするようにし、この力を高めていくようにしましょう。
3.2 近代文語文
大問2の多くは近代文語文からの出題となります。近代文語文とは、明治以降に書かれた文章で、古文・漢文の影響を残して書かれている文章のことです。有名なものでは森鴎外の「舞姫」や夏目漱石の文章が挙げられますが、出題する大学は少なく、一橋大学以外では、上智大学や早稲田大学などごく一部です。なお、かつては京都大学も出題していましたが、近年2002年度以降は出題されなくなりました。出題される文章は漢文訓読体で書かれている文章が多いのが特徴で、漢文訓読体とは漢文の書き下し文と同じ文体のものを指します。高いレベルのものは必要ありませんが、古文・漢文の知識がないと読むことが難しくなります。センターレベルの知識があれば読むのに支障はありませんので、センター対策を行う際にしっかり定着させるようにしましょう。
出題される文章はほとんどが明治時代に書かれたものです。テーマとしては「学問」や「政治」の他、「宗教」や「青年論」など多岐にわたっています。過去問の他、夏目漱石をはじめとした著名人によって書かれた文章を読み、文体に慣れておくと同時に、明治時代にどのような議論が起こっていたのか、要点を整理しておくようにしましょう。
出題内容は、傍線部の内容説明と理由説明の問題が主となります。内容説明では、現代語訳と同じようなものの他、全体を踏まえた要約問題と同じようなものも出題されます。近代文語文であっても現代文と同じように読めるようにしておきましょう。
3.3 古文
この10年で2題の出題と数は少ないですが、古文の出題もあります。本居宣長の文章と「日暮硯」が出題されています。ともに江戸時代の中期以降に書かれたもので、平安時代などの出題は無く、古文の中でも近代文語文に近いものが出題されています。そのため、古文常識はそれほど要求されません。
問題は現代語訳・語句意味説明の他、傍線部の内容説明が出題されます。この内容説明でも、全体の論旨を踏まえての解答が求められることがあります。センターレベルの古文文法・単語知識があれば十分に読める文章ですので、センターが終わった後に、過去問等で記述問題の演習を行っておくようにしましょう。
3.4 現古融合文
現古融合文は、現代文と古文とが混在する文章のことで、そのほとんどが古文を現代文で論じている文章のことになります。古文が含まれるので、古文の知識は必要とされますが、現代文で論じていることもあり、それほど高いレベルがなくても読めます。近代文語文でも書いたとおり、センター対策で古文・漢文を固めておくようにしましょう。
出題形式は、古文で書かれた部分の現代語訳以外は、現代文と大きく変わりません。現代語訳はセンターレベルの文法知識・単語力を身につけていれば解けるので、現代文と同じように取り組むようにしましょう。
3.5 その他
評論の中でも、エッセー色の強い文章が出題されることがあります。ここではそれを、随想文と呼ぶことにします。このような文章も基本的には評論文と同じように取り組みましょう。ただし随筆文の場合、評論文と比べて、筆者の主張がわかりづらい文章であることがほとんどです。それは、随想分が、筆者の主張ではなく、思っていることを書き連ねていることによります。主張を探すのではなく、思っていることをピックアップした上で、優先度順に整理しながら読む必要があります。丁寧に読む意識で取り組むようにしましょう。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介(現代文・近代文語文)
それでは、ここから試験対策・勉強法とおすすめの参考書について解説していきます。一橋大学の入試問題国語は、現代文と古文関連文とが出題されますので、それぞれ別々にまとめていきます。まずは現代文について解説していきます。
これから4段階で勉強法をまとめていきます。それに沿って勉強をしてみてください。ただし、注意点があります。各段階で求められる力には少なくない差があります。問題集・参考書が終わったからといって、闇雲に次の段階へ進んでしまうと全然解けないと言うことが起こります。そんな時は、躊躇せず前の段階に戻ってください。よくわからないまま演習をこなしても国語力は伸びません。自分の実力と相談し、各段階間の往復を繰り返しながら勉強を進めてください。
4.1 土台を固めよう
一橋大学の入試問題では高い表現力と要約力が求められます。これらの力を身につけるためには、基礎力の確立が不可欠です。現代文で言うところの基礎力は、二つに大別されます。「読解テクニック」と「語彙力・背景知識」です。まずは土台を固めましょう。
4.1.1 読解テクニック
まずは、読解テクニックに関して見ていきましょう。これ関しては、皆さんにもなじみがあるかと思います。これを解説している参考書の中には、テクニックの解説を重視している解説書タイプのものと、問題を解く中でテクニックを身につけさせる問題集タイプのものがあります。基本的には、自分に合う参考書を探し、しっかりと読み込んでいけば問題ありません。
以下、おすすめの参考書になります。参考にしてみてください。
さらに、文法の基本知識も定着させましょう。多くはありませんが、文法の基本知識で解ける問題も出題され、それらを取りこぼすことはできません。難問を解けるようになることも重要ですが、基本問題を落とさないようにすることも大切です。
4.1.2 語彙力・背景知識
語彙力とは
「どれだけ多くの種類の単語を知っているかという力。ある言語においてどれだけ豊富な語彙を把握しているかという指標。」
(引用元:実用日本語表現辞典)
とされています。つまり、知っている(意味を説明できる)単語数を増やすことが語彙力の強化につながります。そのため、日頃からわからない単語があれば意味を調べることを習慣化しておけば、語彙力の強化が図れます。一橋大学では漢字が毎年出題されますので、その学習の際に意味も一緒に覚えてしまえば効率的です。
背景知識は、評論文でよく出題される分野・テーマについての知識になります。読解テクニックに比べ派手さがないため、後回しにされがちですが、決して疎かにはできません。例えば、「野球」に関する文章があったとき、この文章を野球に詳しい人が読んだ場合と、野球のことを全く知らない人が読んだ場合を想像してみてください。前者と後者では、前者の方がより簡単に内容を理解できるのではないでしょうか。現代文においても同じことが言えます。簡単に読める文章を増やしちゃおう、というのが背景知識の強化になります。ただ勘違いしないでほしいのは、どのテーマについても深く知らなければならないというわけではないということ。その分野・テーマについての概要やポイント、一般的な議論の方向性を押さえ、それらの知識を問題演習の中で固めていくイメージで取り組んでください。
以下に、お薦めの参考書を掲載しておきます。
『入試漢字マスター1800+』(河合出版)
『生きる漢字・語彙力』(駿台文庫)
『頻出入試漢字コア2800』(桐原書店)
『読解を深める現代文単語』(桐原書店)
また、テーマごとに具体的にどのような議論が行われているかを知る上で、以下の参考書もお薦めします。
『現代文テーマ別頻出課題文集』(駿台文庫)
『小論文を学ぶー知の構築のために』(山川出版社)
上記の3冊の参考書については、勉強の合間などの息抜きの際に読んでみてください。テーマについて理解が深まることもさることながら、ものの見方・考え方が広がります。また、学校指定の教科書もいい文章が集められています。定期考テストのためだけに読むだけではもったいないので、もう一度目を通すことをおすすめします。
語彙量・背景知識に関しては参考書を一周すればそれでいい、という類いのものではありません。次の段階では、いよいよ問題演習取り組みますが、そこにおいても、わからない単語があれば調べ、文章の内容をしっかりと理解することを念頭において取り組んでください。
4.2 問題を解いてみよう
読解テクニックを学習した後は、演習をこなしていくことになります。いきなり記述をすることはなかなか難しいため、まずは選択問題を中心に問題を解き、読解力を鍛えていきましょう。ここで注意してほしいのは、「選択肢の落とし方」の勉強に終わってしまわないようにすること。自分の本当の国語力を鍛えることを意識して取り組んでください。しっかりとした読み方が出来るようになれば、センター現代文も解けるようになります。ここで、センター試験で8割を取れる力を身につけましょう。
以下にお薦めの問題集を載せておきます。
『現代文読解力の開発講座』(駿台文庫)
『入試精選問題集7-四訂版-現代文』(河合出版)
『大学入試問題選 現代文 中堅私立大学レベル(マーク式+記述式)』(日栄社)
以上の問題集の内、解答・解説が自分に合うものを選びましょう。問題集に取りかかる際には、「復習」を大事にしましょう。読解テクニックを踏まえ、解答までのプロセスを身につけてください。その上で語彙力・背景知識の強化も念頭に置いて取り組みましょう。また、一橋大学の入試問題で要約は避けて通れません。自主的に100~200字程度で要約してみるようにしましょう。上記であげた問題集の中には、100字要約など、要約されたものが解説の中に記載されているものがありますので、自分で書いてみた要約を見比べてみて、要約力を磨いていってください。また、これらの問題集は2周以上行うことで、文章の理解を確かなものにすることが出来ます。問題集で読んだ文章の理解に少しでも不安がある場合には、繰り返し解いて自分のものにしてください。
4.3 記述力の養成
語彙力・背景知識の強化を図りつつ、4.2での演習を終えれば、いよいよ記述問題の演習に移ります。記述問題になったとしても、解き方は今までと大きく変わりませんので、気負わずにチャレンジしましょう。前段階でしっかりと要約練習ができていれば、記述自体に対する苦手意識はもうほとんどないと思います。ここでは、表現力をより磨いていく意識で取り組みましょう。
以下、おすすめの問題集になります。比較的解説が充実しているものを選んでいます。誤答例が記載されているものや、採点基準を明確化しているものもありますので、自分にとって使いやすいものを選んで取り組んでください。また、ここでも「復習」が大切です。自分で書いた答案を丁寧に添削する作業で、内容の整理・理解が進みます。復習に際しては、問題に取り組むときと同じかそれ以上に丁寧に取り組むようにしてください。要約も忘れずに取り組み続けてください。
『入試現代文のアクセス 完成編』(河合出版)
『現代文と格闘する』(河合出版)
これらの問題集に関しても、文章を自分のものにするために2周以上解くことをおすすめします。またここでも、語彙力・背景知識の強化を怠らないようにしましょう。
4.4 過去問・模試による演習
ここまで来れば、かなりの国語力が身についていることでしょう。後は、過去問・模試を通じて一橋大学の試験で求められるレベルの表現力を養い、練習を重ねていきます。また、この段階で、近代文語文にも慣れておきましょう。
過去問は定番の赤本・青本に取り組みましょう。近代文語文を取り扱っているものは少ないですが、以下のものがあります。
『近代文語文問題演習』(駿台文庫)
京都大学の過去問にも目を通しておけば問題ありません。
また、「一橋大学への国語」(駿台文庫)など模試の過去問も有益です。実際の過去問だけでは物足りないときには、活用してみましょう。
5. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介(古文・現古融合文)
次に古文の勉強法を見ていきます。一橋大学の国語においては、古文の優先度は低くてかまいません。センター試験高得点を取れる力を身につけられれば十分ですので、高2~高3にかけての勉強開始でも問題ありません。
これから3段階で勉強歩を見ていきます。ただし、現代文と同様、段階ごとに求められる力に差があります。自分の実力と相談し、段階間の往復を繰り返しながら、進めていってください。
5.1 基礎を固めよう
古文の基礎力は、文法知識と単語です。英語に比べて覚えなければならない量は少ないので、早めに固めてしまいましょう。
まずは文法知識について見ていきます。出版されている参考書には解説書型のものと、ドリル型のものがあります。使いやすいものを使うことが大原則ですが、解説書型のもので読んだ単元を、ドリル型で演習するようにすると理解が深まりますので、おすすめです。
おすすめの参考書を掲載します。
『基礎からのジャンプアップノート 古典文法・演習ドリル』(旺文社)
『望月光 古典文法講義の実況中継①②』(語学春秋社)
続いて単語です。これは、使いやすい単語帳を見つけ、それで覚えていきましょう。古文の単語帳は、イラストや語源、ゴロなど、多種多様な暗記へのアプローチが用意されていますので、購入前に自分の目で確認するようにしましょう。
また、文法問題を解いていて不明点が出てきた場合は文法の参考書も読んでおきましょう。知識が曖昧な部分を中心に一通り目を通しておくと良いと思います。わかったつもりになっているところでも新たな発見が得られるのではないでしょうか。
『マドンナ古文単語230』(学研教育出版)
『古文単語ゴロゴ』(スタディカンパニー)
なお、覚える際には例文の音読が効果的です。暗唱できればベストです。古文の言い回しに慣れる意識を持つと取り組みやすいです。
5.2 問題演習をしよう
ある程度、文法知識と単語が身についたら、問題演習をしていきましょう。まずは、文章に慣れることを意識して問題に取り組んでください。スタートアップとしては、以下の問題集がおすすめです。
『古文上達 基礎編 読解と演習45』
これで文章に慣れると同時に、前段階で学んだことを定着させてください。センター試験まで半年以上空いている段階で、実力がついてきたと感じたら、次の問題集をやってみてください。
この問題集は難易度別に三段階に分かれています。一番簡単な段階はすでに簡単に解けるようになっていると思いますので、飛ばしても結構です。
センター試験まで半年を切っている場合は、センター対策を始めてください。過去問が最良の問題集となりますが、その前段階として、以下の問題集をしておくことをおすすめします。
『マーク式基礎問題集19 古文 四訂版』(河合出版)
マーク式の問題の解き方に慣れれば、問題なく高得点が取れると思います。
なお、古文の重要要素として「古文常識」があります。書かれた時代独特の制度・物品や風習がこれに当たります。一橋大学では、重要度は低いので、演習で見かける度に覚えていくようにしておけば問題ありません。解説内に言及されていますので、そこをしっかり読むようにしてください。
5.3 過去問演習
ここまでくれば、一橋大学の古文関連問題で要求される力は身についています。あとは、現代文と併せて過去問演習を進めてください。
(参考)
一橋大学|平成30年度一橋大学入学者募集要項
実用日本語表現辞典