目次
- はじめに
- 概要
- 試験日
- 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
- 配点
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 理論化学
- 無機化学
- 有機化学
- 高分子化合物
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
- 教科書内容の振り返り
- 知識の補強
- 解法パターンの習得と計算力の増強
- 定番問題の習得
- 過去問演習
1. はじめに
自治医科大学は、へき地や地域における医療を充実させる目的で設立された栃木県の私立大学である。私立大学という区分ではあるが、その名の通り自治省(現在の総務省)によって設立された大学である。また、自治医科大学は医師国家試験の合格率が非常に高いことでも知られている。
教育理念には、以下の3点が記載されています。
- 医の倫理に徹し、医師としてのプロフェッショナリズムと豊かな人間性をもった人格の形成に力を注ぐ。
- 高度な医学知識と総合的な臨床能力を備え、常に進歩しつづける医学の様々な分野に対応できるように生涯にわたり精励する医師を育てる。
- 医療にめぐまれない地域で進んで医療に挺身し、地域のリーダーとして必要な教養と資質を備え、社会に貢献する気概を持った医師を育てる。
(引用元:自治医科大学|医学部|医学部の紹介|ミッション(使命))
合格最低点などは非公表になっている。というのも、自治医科大学は入学定員を各都道府県に振り分けて合格者を決定するため、成績上位者が必ずしも合格するとは限らないのである。進学校が多く存在する都道府県では合格が難しいと言えるだろう。
6年間の学費は2200万円程度で、私立医学部の中ではかなり安い部類に入るだろう。また、在学中は貸与され、卒業後9年間指定公立病院等に勤務した場合その返還は免除される。
2. 概要
2.2 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
(試験科目・試験範囲)
・英語:コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III・英語表現I・英語表現II
・数学:数学I・数学II・数学III・数学A・数学B(数列・ベクトル)
・理科:『物理基礎・物理』『化学基礎・化学』『生物基礎・生物』の3科目から2科目選択。
(試験時間)
■1次試験
○学力試験
9:00〜10:20 数学(80分)
10:50〜12:10 理科(80分)※2科目選択
13:10〜14:10 英語(60分)
○面接試験
10:10〜16:00 面接
2次試験
・小論文(90分)
・集団面接(約40分)
・個人面接(約10~15分)
(解答形式)
・英語:マークシート方式
・数学:マークシート方式
・物理:マークシート方式
・化学:マークシート方式
・生物:マークシート方式
2.3 配点
■1次試験
○学力試験
・英語(25点)
・数学(25点)
・理科(50点)※1科目25点
○面接試験
・面接
■2次試験
・小論文
・面接
2.4 出題の傾向と特徴(概要)
マークシート形式で小問25問からなっており、化学基礎、理論化学、無機化学、有機化学、高分子の順に出題されている。2014年以降では各分野5題ずつの出題となっている。計算問題よりも知識問題の方が多い印象だが、試験時間も二科目40分と短く、問題数も多いので1問にかける時間を短くしていく必要がある。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 理論化学
化学基礎範囲も含めて例年8-12題出題されている。近年では、充填率の変化、沸点上昇、圧力、化学平衡、電気分解、単位格子の密度、溶解度、蒸気圧曲線、ロウソクの燃焼、電気分解、生成熱、水のイオン積、酢酸の電離平衡、酸化還元滴定、中和滴定などが出題されている。内容はそれほど難しくはないが、教科書発展内容まで理解しておきたい。
3.2 無機化学
例年5題程度出題されている。近年では、金属の推定、気体発生、オストワルト法、陶磁器、アンモニアソーダ法、金属の定性分析、ガラス、鉄の性質、ミョウバン、濃硫酸の性質、ハロゲンの性質が出題されている。知識問題がほとんどであり、有名工業反応を使った計算が問われることもある。金属の分離を中心に、化合物の性質を押さえておこう。
3.3 有機化学
例年3-5題出題されている。近年では、化合物の沸点、分子式算出、油脂の構造推定、ニトロ化、エステルの構造推定、塩化ベンゼンジアゾニウムの分解、元素分析装置、けん化が出題されている。構造推定と言ってもそれほど難しくはない。各化合物の性質、各反応をしっかり理解しておけば対応できる。
3.4 高分子化合物
例年3-5題出題されている。近年では、ポリビニルアルコールの分子量、酵素と基質の組み合わせ、イオン交換樹脂によるアミノ酸の分離、高分子の性質、ポリエチレンテレフタラート、元素分析値からのアミノ酸や2本鎖DNAの推定が出題されている。合成高分子の重合度や分子量計算、天然有機・天然高分子の特徴は漏れなく押さえておきたい。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
■Step.1 教科書内容の振り返り
教科書を用意し、一章ずつ読み込む。入試問題は、原則として教科書から出題される。特に各教科書の参考・発展・コラム・実験などは、入試問題の格好の材料になり、出題頻度も高い。自治医科大の入試問題の特徴としては、全ての問題が小問集合で構成されており、2科目80分(平均すると1科目40分)で小問25題を解く点にある。難易度はそれほど高くないが、ほぼ万遍なく色々な分野から出題され、かつ解くスピードも求められるので見た目ほど容易ではない。
ただし、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、Step.1では全てを理解する必要はない。この段階では、各教科書の発展やコラムには触れなくても良い。ざっとどんなことが書かれているか整理していくと良い。読んでもすぐには理解出来ないという人は、下記の紹介されている参考書などを教科書の対応する箇所を合わせて読み込むと良い。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も一冊用意しておくと良い。得た知識をどう使っていくのかについては下記の問題集を利用して、確認していくと良い。
○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)
○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)
■Step.2 知識の補強
自治医科大では、理論・有機・無機・高分子関係なく万遍なく問題が出題され、内容も計算問題よりも知識問題が重視な傾向である。試験時間は短いので計算以外の知識問題でいかにすばやく解答が作れるかがポイントになってくる。グラフ問題なども出題されるが、ここも時間をかけたくない。教科書に登場する知識はしっかりと整理し、知識問題はすぐに解答が浮かぶように訓練してほしい。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。
◯理論化学
ほぼ全分野から万遍なく出題される。知識問題としてはそれほど難易度が高いわけではない。理論の計算問題の中にやや複雑な計算問題も紛れているので、単純な知識で解ける問題はとにかく瞬発的に解けるようにしていきたい。
◯無機化学
金属の系統分析、気体の発生、工業的製法など万遍なく出題されている。ミョウバンや土器と磁器の違いなどを聞いてくるなど教科書に載っているものは何でも出題されている印象である。このような単発の知識問題は、普段意識していないと覚えることは出来ないので、過去問や模試で聞かれたことは出来る限り教科書で調べ、確実に習得して欲しい。また、化学反応式に関する問題も登場しているので、こちらも出来る限り書けるようにしておきたい。
◯有機化学
構造決定、異性体の数え上げ、有機物質の性質、有機の系統分離など多岐に渡る単発な知識問題の集合である。異性体の数え上げや油脂の計算問題、同一平面上の炭素原子の数など慣れていないと解きにくい問題も多く出題されている、有機に関しては、知識を身に付けることと問題演習をセットで行い、問題を解くために運用できる知識として習熟して行って欲しい。
◯高分子
天然高分子・合成高分子ともに万遍なく出題される。アミノ酸や糖の性質、ペプチドの計算問題、糖の構造、合成高分子の原料、特徴、計算問題など多岐に渡る出題である。とにかく教科書に載っている知識は一通り覚える必要がある。ただし未知の知識問題や複雑な計算問題は出題されていない。
■Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強
Step.3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。自治医科大で登場する計算問題は、一行系のの計算問題しか出ないので、一行系の計算問題を数をこなし、迅速に対応できる対応力を身に付けたて欲しい。一行系の計算問題とはいえ、計算自体は多段階になる複雑なものもいくつか混ざっている。短い時間の中で解いていくことになるので、優先順位のつけ方も意識していくとより実践的な計算力につながっていく。下記の問題集や参考書を使い、標準的な計算問題の解法を身に付けていく。
『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)・・・ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習すると良い。
『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)・・・入試レベルの計算問題が良いという場合は、こちらの問題集で練習すると良い。
■Step.4 定番問題の習得
ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。自治医科大では、小問集合しか出題されていないので、重要問題集ならA問題、良問問題集なら確認問題と基本問題までで良いので繰り返し解いて標準的な問題の解き方が染みつくように学習すると良いだろう。難しい問題にはあまり手を出さず、基本的なレベルのものを数多く解く方が効果的である。
『化学の良問問題集』(旺文社)
○参考書
『化学の新研究』(三省堂)
■Step.5 過去問演習
Step.1-3をクリアしたら過去問演習に入りましょう。
『自治医科大学(医学部)』(教学社)
本Stepでは以下の手順に沿って演習・復習に取り組めば、ただ普通に過去問を解くということをするよりも数段効果的であるのでぜひ参考にしてほしい:
1. まずは制限時間内で解いてみる。
2. 制限時間が終了した段階でここまでの出来を採点する。
3. 時間が足りずに解ききれなかった問題を、時間無制限で取り組み、答え合わせを行う
4. 自分に足りなかったポイントを列挙する。知識問題で間違えたなら今まで学習した項目のどの部分が抜けていたのか。考察問題で間違えたならどういった視点が足りないのか。時間があれば解けるもののスピードが足りないならどの部分の理解と練習が足りないのかといった観点を大事にしよう。
5. Step.4に戻り、該当単元の演習を再度行った上で、周辺分野の知識をすべて整理する。
過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析を元に、同時並行で弱点補強を進めよう。直前期は基礎的な内容に取り組むよりも難しい問題ばかりに手を出したくなるが、大事なことは合格点を取ることである。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性の鍛錬の方がはるかに合格への近道と言えよう。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めたい。
問題の難易度や傾向を考えるとセンター試験を演習問題として利用していくと良い。他の私大医学部の小問集合のみを抜粋して解いていくのも効果的である。