目次
- はじめに
- 概要
- 試験日
- 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 細胞と分子
- 代謝
- 遺伝情報の発現
- 生殖と発生
- 遺伝
- 動物の反応と行動
- 植物の環境応答
- 生物の多様性と生態系
- 生命の起源と進化、生物の系統
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
- 用語、定義の確認
- 実験、考察問題に取り組む
- 計算問題への取り組み
- 過去問・模擬問題を用いた演習
1. はじめに
北里大学医学部は、北里柴三郎博士を学祖とする私立医学部で、「開拓・報恩・叡智と実践・不撓不屈」の精神に則った人材を養成しており、アドミッションポリシーの中でも以下のように記載されている。
北里大学医学部アドミッションポリシーより引用:
・選抜者基本方針
患者さんの立場に立って考えることができる思いやりと生命に対する畏敬の念をもって医療にあたることができる「人間性豊かで優れた医師の養成(学部基本理念の一つ)」を目的とすることから、入学者の受け入れにおいては、学力試験の結果を尊重することはもとより、将来医師となるべき資質、能力をも含め、総合的な判定による入学者の選抜を基本方針としています。・理念、目的等
現代医療において特に重要視されている「チーム医療」の観点から,人望や包容力など「リーダー」としての資質を備え,体系的な医学知識と確実な医療技術を持ち,最先端の医学に関する知識を意欲的に吸収する努力を続けることができる医師の養成を理念としています。・求める学生像
・医師であることはもとより,一人の人間として,相手に共感できる思いやりを持つ学生。
・患者さんの立場に立って考えることができて,社会人としてのマナーを実践できる学生。
・医学ならびに医療行為を通じて社会的,国際的に貢献したいと考える学生。
・広い視野を持ち,いろいろなことにチャレンジできる学生。
・さまざまな刺激と影響を受けながら,自己を確立できる学生。
2. 概要
2.2 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
(試験科目・試験範囲)
・英語:コミュニケーション英語I 、コミュニケーション英語II 、コミュニケーション英語III 、英語表現I 、英語表現II
・数学:数学I(「データの分析」を除く)、数学II 、数学III 、数学A、数学B(「確率分布と統計的な推測」を除く)
・理科:次のうちから2つを選択(出願時に選択)
(1)物理基礎、物理(「原子」を除く)
(2)化学基礎、化学
(3)生物基礎、生物
(試験時間)
1次試験
10:00〜11:20 数学(80分)
12:20〜13:30 外国語(70分)
14:10〜15:50 理科(100分)
2次試験
10:00〜11:30 小論文(90分)
12:30〜16:00 面接(個人・グループ)・健康診断
※健康診断は必要と認められた者のみ。対象者については第2次試験日当日に通知。
※試験日選択制のため、志願者の人数により、2時限目の終了時刻は変動。
(解答形式)
・英語:マークシート方式
・数学:記述・論述式
・物理:マークシート方式
・化学:マークシート方式
・生物:マークシート方式
2.3 配点
・数学(150点)
・英語(150点)
・理科(200点)
2.4 出題の傾向と特徴(概要)
全問マークシート方式で、大問Ⅰ~Ⅲ題の構成となっている。毎年、大問1つに対し小問が平均15~20題程度で構成されている。北里大学医学部生物の難しいところは、試験時間が2科目100分であるため、生物に費やすことのできる時間が約50分と少なく、問題数に対して制限時間が厳しくなっているところである。全体的に50題弱の小問を50分でこなすとなると1問にかけることのできる時間は平均1分程度となり、日頃から速読や即解に慣れていない人は合格点に達することは難しい。1問1問の難易度を見ても易しいというはけでは決してなく、標準的な内容となっており、考察問題からの出題が多いという傾向にある。考察問題が特徴的な北里大学であるが、一般的に他大学と異なる特徴は以下の二つである。
①高校生物の範囲にはない考察実験からの出題が多い
②リード文が長く複雑で読解に時間がかかる
この二つの条件が同時にある時点で生物の難易度としてはかなり高いことが伺える。加えて1問1分という途方もない時間制限も加味すると、一層難易度が増す。
①に関しては、やはりホスホフルクトキナーゼや長堤間充織、尺骨、橈骨などの大学で学ぶ単語が多く出題される。これらの定義はリード文に書かれており、それを理解するための時間がまずは必要になってくる。グラフや図表も高校生物の資料集では見たことのないものが多く出題される。もちろん、事前に考察実験の内容を知っておく必要はないが、時間に余裕のある人は大学1年生が用いる代謝や細胞生物学、生理学、分子生物学を一通り学べるテキストを読んで実験系の知識をストックしておくとよい。
②に関しては、日頃から多くの標準的な考察実験にふれていないと歯が立たないだろう。問題を解く前に実験内容がさっぱりわからない、といった状況に陥りやすいため、小問の少ない考察問題であれば後回しにするなど時間の効率的な使い方を習得しないといけない。特に2015年度の入試は難問ぞろいであり、受験生を大いに悩ませたであろう。
計算問題に関しては、例年、動物の反応と行動(神経、筋肉、血液)や遺伝情報の発現、次いで代謝を題材にすることが多く、残りは遺伝が大多数を占めている。珍しく、遺伝が計算問題になることは少なく、数年に一度しか出題されていない。計算問題のみが大問で扱われることはなく、各大問に小問として数問、登場する形式である。知識・考察問題と計算問題の比率は7:3程度である。
また、2科目で100分ということからじっくりと考える時間があまりないため、他の教科に影響が出てきてしまう可能性もある。幸い、化学が比較的解きやすいため、化学を早めに終わらせるのも手である。北里の生物は、標準的な問題を出題している割には時間的制約が厳しいため、化学や物理と比較して難易度が少々高いといえるだろう。そういったことを考えると最終合格点には7割程度の正答率が必要になると考えられる。 難易度にもよるが、6割程度でも合格水準に乗ることがあるので、本番で難易度の高い問題に当たっても気を抜かずにベストを尽くしてほしい。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 細胞と分子
出題頻度はそれほど高くなく、過去の出題からはDNA 合成や細胞周期のグラフ問題が頻出しているため、手持ちのテキストで演習をしてほしい。グラフの見方や計算方法の流れをしっかり暗記しておくことが望ましい。また、慣れない生徒も多いと思うが、ゲノムや核相、染色体1本あたりのDNA 量などの表現にも慣れ親しんでおいてほしい。受験が近づいてきたら細胞小器官の大きさなど細かいところまでチェックしておくとよいだろう。
3.2 代謝
代謝は計算問題と関連させて出題することが多い。アルコール発酵や呼吸商、光合成速度を問う出題が頻出である。北里大学の出題形式は計算や考察問題が独立した形式ではないため、当然用語や実験考察も聞かれる。呼吸商の実験や真の光合成速度と見かけの光合成速度が説明できない人はもう一度、教科書やテキストの用語に戻って確認してみよう。
3.3 遺伝情報の発現
最も頻出する単元の一つである。毎年、必ず1題は出題されたいるため、しっかりとした対策が必要となる。DNA 複製や転写、翻訳に関する問いやバイオテクノロジーの分野が毎年のように出題される。スプライシングの過程や遺伝子の組換え実験は頻出である。複数の制限酵素を用いて遺伝子を切り離して遺伝子組み換えする題材は新課程以降のブームとなっているため、しっかりと実験の流れを掴んでおこう。また、考察問題のリード文が複雑で長いことが多いため注意が必要である。
3.4 生殖と発生
北里大学の生物では頻出単元の一つであり、数年のように一度出題されているので注意が必要である。ニワトリの真皮の誘導や目の誘導、中胚葉誘導など実験考察問題と関連させての出題が大多数を示す。中には両生類の神経胚と細胞接着分子の問題などの問題が出されている。旧課程同様、考察問題が出しやすい分野であるが、考察実験そのもののレパートリーは少ない単元であり、対策しておくと実験結果と解答が容易に想像できることが多いため、資料集や重要問題集で一通り実験内容と実験結果を記憶しておくことが望ましいだろう。また、母性効果因子やBMP、中胚葉誘導と誘導タンパク質の関係、間充織と上皮の分化などを重点的に再確認しておこう。
3.5 遺伝
北里大学の遺伝は数年に一度の出題であり、頻出単元とは言えない。ただし、ここ数年出題されていない年が続いているので注意が必要である。胚乳遺伝や自家不和合性など難度の高い遺伝が聞かれるわけではなく、専ら二遺伝子雑種の独立、連鎖型(不完全連鎖)の問題が出題されることがほとんどである。年度によっては家系図を使って、遺伝病の様式を特定させたり、親族の遺伝子型を決定させるような問題も出題されているが、特段計算が難しいわけではなく、セミナーやリードαの問題をこなしておけば十分対応できる。
3.6 動物の反応と行動
遺伝情報の発現と並んで毎年出題される単元である。単元内の出題項目は多岐にわたっているため予測は難しいが、筋肉、神経、受容器と効果器、体内の恒常性、免疫など年度を変えて出題が続いている。もう一つ特徴的なことは、膜電位と伝導速度の計算、酸素解離曲線、錐体桿体細胞のグラフなど計算問題と関連させた出題が多い。
3.7 植物の環境応答
植物ホルモンや花芽形成の2大分野を筆頭に出題が続いている。光条件の考察実験や植物ホルモンの作用は試験前にしっかり確認しておく必要がある。発生の単元同様、青色光受容タンパク質やオーキシン輸送タンパクなど新出単語が多く注意すべき単元である。
3.8 生物の多様性と生態系
生態系、環境破壊、植物群落、個体群など、進化の分野と合わせて数年受験日程のギリギリになって対策するなどはしないようにしよう。むしろ、生体の単元と並行して学習していくと全体的な得点率は上がっていくかもしれない。環境破壊に関しては、環境アセスメントにあてはまるものを選ばせる問題であったり、外来種を全て求めさせる問題があったりと吟味に悩むことが多い単元である。資料集などで細かい知識を補強しておくとよい。年度によっては、生命曲線を用いて平均死亡率を求めさせる問いや、標識再捕法の計算問題が出題されることがある。他の医学部とは異なり、バイオームまでしっかり出題されているので全分野をしっかり対策しておく姿勢が必要となる。
3.9 生命の起源と進化、生物の系統
非生体系の出題系では、この単元からの出題が多い。特に生物の分類と系統、動物界の分類がよく出題されている。手つかずになることの多い単元であるが、いち早くこの単元を攻略しておくことをお勧めする。例年、この単元からの出題難易度は難解ではなく簡単であることが多い。時間がない生徒であっても上記の項目だけは暗記しておこう。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
■Step.1 用語、定義の確認
北里大学の場合、資料集の片隅に載っているような知識も問われることがある。時間が有り余っている受験生以外は基本用語と標準的な考察問題に的を絞った方が効率的である。急いでマニアックな単語を詰め込む必要はなく、そのような単語に本番で出会ったとしても落ち着いて消去法で対処できればそれでよい。基本単語は、問題を見た瞬間にアウトプットできるまでにブラッシュアップしてほしい。しかし、それ以上に重要なのは正確な定義の暗記であるので、単語の丸暗記ができたら、そのまま点数に反映するとは限らないことをしっかり覚えておこう。
参考書
・『チャート式 新生物、生物基礎』(数研出版)
・『大森徹の最強講義』(文英堂)
・『大学入試の得点源(要点)』(文英堂)
・『生物 知識の焦点』(Z会)
・『理解しやすい生物、生物基礎』(文英堂)
・『田部の生物基礎をはじめからていねいに』(東進ブックス)
・『生物基礎が面白いほどわかる本』(中経出版)
初学者は、いきなり問題を解き始めるよりも参考書や教科書を使って生物現象や用語の定着に努めるほうが効率的である。用語が定着した後は、問題集でアウトプットしていこう。リードやセミナーを使う際の注意点としては、いきなり発展問題などはやらずに、セミナーのプロセスやリードにあるリードBなど基礎問題の反復練習に努めるほうが効率がよい。
問題集
・『基礎問題精講』(旺文社)
・『らくらくマスター 生物・生物基礎』(河合出版)
・『生物用語の完全制覇』(河合出版)
・『セミナー 生物』
・『リードα 生物』
・『リード light 生物 生物基礎』
■Step.2 実験、考察問題に取り組む
ここからは、標準問題を軸に実際の考察問題を解いていくことになる。近年の大学入試では、医学部にかかわらず考察問題を中心に問題が構成されることが多いが、北里大学では独立した小問で考察問題が出されることが多く、加えて実験結果が予測できるようなものばかりである。したがって、対策としては難しい考察問題を闇雲に解くのではなく、標準的な問題を数多くこなし、実験概要と結果をしっかり記憶しておくことである。時間の短縮につながるだけでなく、予測しながら解答をしていくことができるようになるため精神的にも安定する。ニワトリの真皮の誘導や、中胚葉誘導の実験結果など、普段から考察問題をこなしていく上で、ノートなどに実験結果をストックしていくとよいだろう。1周目の取り組み方としては、しっかりリード文を読んで自分で考えて答えを導き出しで見ることである。この時点で完璧な答案を作る必要は全くなく、わからなかった問題は解答解説を理解することを心がけよう。
また、重要問題集や標準問題集は考察問題がメインであるが、この問題集は国立大学の問題を多く掲載しており、北里大学にとってはオーバーワークな側面もあるため、時間がない人は手を出す必要はないだろう。
・『セミナー 生物』
・『リードα 生物』
・『生物の良問問題集』(旺文社)
・『基礎問題精講』(旺文社)
・『生物重要問題集』(数研出版)
・『生物標準問題精講』(旺文社)
■Step.3 計算問題への取り組み
計算問題は、個別に対策しておく必要がある。セミナーやリードαなどの網羅系問題集にも計算問題は含まれているが、計算問題に対する網羅性はあまりよくない。
『大森徹の生物遺伝問題の解法―合格点への最短距離』(旺文社)
『大森徹の生物 遺伝問題の解法』(旺文社)
北里大学は基本的であるが毎年、計算問題が数問出題されるため、必ず個別に対策しよう。特に、遺伝、神経の伝導速度、ミクロメーター、浸透圧、塩基対数の計算、ハーディー・ワインバベルグの法則、系統樹、生体系に関する計算などは頻出である。 公式を暗記することも大切であるが、公式の導出過程を理解し、忘れないような学習をしていくことが重要である。また、計算問題に関する注意点であるが、計算問題のみが記述であることが多いため、選択肢に頼ることができず、自力での完答が求められる点に注意しておこう。
■Step.4 過去問・模擬問題を用いた演習
Step1~3が終了したら、過去問を解き始めよう。過去問は、できれば夏明け辺りから始めたいところである。もちろん、もっと早い段階で実力がついていれば、過去問に着手してもよい。よく直前期になるまで過去問を解かずに取っておくという話を聞くが、step1を終えたころに一度過去問を解いてみるといいかもしれない。どういった単元が頻出しているのか、難易度はどのくらいか、ということがイメージしやすくなるだろう。
また、過去問を解くときには時間を計るようにしよう。いくら正答率が高くても時間内に解ききれなければ意味がないからである。
(参考)
北里大学|入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)
北里大学受験生サイト|学部入試情報|一般・センター入学試験|一般入学試験|医学部一般入学試験要項
北里大学受験生サイト|学部入試情報|募集要項・Web出願|募集要項・出願書類|「学生募集要項」(2019年度入学試験)