目次
- はじめに
- 入試の概要
- 試験日
- 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
- 配点
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 細胞と分子
- 代謝
- 遺伝情報の発現
- 生殖と発生
- 遺伝
- 動物の反応と行動
- 植物の環境応答
- 生物の多様性と生態系
- 生命の起源と進化、生物の系統
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
- Step.1 用語、定義の確認
- Step.2 実験、考察問題に取り組む
- Step.3 計算問題への取り組み
- Step.4 過去問・模擬問題を用いた演習
1. はじめに
九州地方の私立大学である久留米大学は、医学部の難易度は他の大学の医学部と比較して格別高いわけではないが、試験問題は難しい問題も出題される上に合格に必要とされる得点率も低くないので、入念な準備が必要となる。
医学部医学科のアドミッションポリシーには、入学者受入方針が3点記載されており、受験で成功するために必須ともいえる項目がきれいにまとまっている。医学部受験を志すに当たって、是非下記の3点に当てはまっているかどうか、今現在の受験勉強に向けた姿勢を確認してみよう。
医学部の学士課程の教育を受けるに足る基礎学力を有していること。
自律的学習能力と旺盛な知的好奇心を有すること。
心身ともに健康で協調性に富み、高い倫理観と豊かな人間性を有すること。
(引用元:久留米大学|医学部医学科|3つのポリシー(医学部医学科))
合格の難易度に関しては、倍率は10倍程度のため、私立医学部の中では標準レベルとなっている。合格最低得点率は年によっては7割を超えることもあり、ケアレスミスを防いで失点を抑えることが重要である。
2. 概要
2.2 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
【前期日程・後期日程共通】
(試験科目・試験範囲)
英語:コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III・英語表現I・英語表現II
数学:数学I・数学II・数学III・数学A・数学B(数列・ベクトル)
理科:下記(1)(2)(3)から2科目選択
(1)物理基礎・物理(”原子”の章・編を除く)
(2)化学基礎・化学
(3)生物基礎・生物
(試験時間)
1次試験
9:30〜11:00 英語(90分)
12:10〜14:10 理科(120分)※2科目選択
15:00〜16:30 数学(90分)
2次試験
(前期:10:00〜11:00 / 後期:9:00〜10:00)小論文(60分)
(前期:12:30〜17:00 / 後期:10:30〜)面接
(解答形式)
・英語:記述式(和訳・英訳)・マークシート方式併用
・数学:記述式 ※答えのみ
・物理:記述式 ※答えのみ
・化学:記述・論述式
・生物:記述・論述式
2.3 配点
1次試験
・英語(100点)
・数学(100点)
・理科(200点)
2次試験
・小論文(50点)
2.4 出題の傾向と特徴(概要)
久留米大学の一般入試は選択問題と記述の混合形式であり、毎年高得点が予想される。年によっては生物の正規合格者最低点が83%になることもある。模試の偏差値や判定は受験者の能力を正確に反映しているとは一概に言えないので、模試の結果に左右されることなく、過去問研究に励んでほしい。とにかく、単語問題は条件反射的に、考察問題では実験の流れと結果がすぐに思い浮かぶくらいまで訓練しておきたい。
大問は3つからなり、難易度は易しく素直な問題が多い。時間も60分と多めに用意されており、じっくりと考えなら取り組むことができる点が他の医学部とは大きく異なっている。加えて、下線部説明(記述)、空所補充(記述)が大半を占めており、国立型に酷似した医学部としては珍しい構成をとっている。
穴埋め記述はそれぞれの大問に設定されており、各10問ずつ程度で難易度は教科書の太字レベルである。特筆すべきは、必ずと言っていいほど1問だけ頭を抱える単語が出題されることである。これも教科書の太字レベルなのだが、生物多様性や生体的地位など、前後の文脈を見てもすぐには答えの浮かばないものが多く、解けない受験生も多いと考えられる。したがって、10問中、9問を完答し、記述を正確に解答するようにしよう。記述の内容は100字程度で字数が与えられているため、前もってしっかりとした対策をしておく必要がある。
大問1は考察問題で構成されており、他の大問より難易度が高く記述量が多い。設問は6~8つほどあり、初めの設問に10問程度の空所補充が設定されている。難易度が高いといっても標準であり、迷うような設問もないであろう。普段から重要問題集などの考察問題をこなしていれば、合格点に届きうる力はつくと思われる。
出題範囲は教科書の内容全体に渡っており、植物の範囲も例外ではない。中でも分子生物や体内環境、生態系は毎年出題されており、3題中1題は必ず植物(生体系、進化と系統)の分野から出題されている。これらの傾向に目を通してみると、人体のみを問う出題傾向が顕著である医学部単科大学との併願は相性が悪いといえる。知識、考察問題と知識問題が大半であり、計算問題は全くでない年もある。その比率は9:1程度ある。数学はさておき、計算が苦手な受験生にも取り組みやすい構成になっている。
計算問題に関しては、遺伝、系統樹、生態系に関するものがほとんであり、大問1つが計算問題のみで構成されることは少なく、ほとんどが小問として独立して出題されている。したがって、計算問題があまり得意ではない、という受験生にとっては取り組みやすい問題構成であるといえる。1つ注意点があるとすれば、計算が記述である年度もあるため、選択肢に頼った解答ができないというところである。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 細胞と分子
過去の出題からはDNA 合成や細胞周期のグラフ問題が頻出しているため、手持ちのテキストで演習をしてほしい。、グラフの見方や計算方法の流れをしっかり暗記しておくことが望ましい。また、慣れない生徒も多いと思うが、ゲノムや核相、染色体1本あたりのDNA量などの表現にも慣れ親しんでおいてほしい。
3.2 代謝
代謝経路に関する単語レベルの出題がほとんどであり、その出題傾向は適語補充がほとんどである。しっかりと用語の定義を掴んでおかないと誤った選択をしかねない単元であるので注意してほしい。代謝経路だけでなく、光合成や呼吸商に関しいてもしっかり学習しておこう。
3.3 遺伝情報の発現
最も頻出する単元の一つである。毎年必ず1題は出題されるため、しっかりとした対策が必要となる。DNA複製や転写、翻訳に関する問いやバイオテクノロジーの分野が毎年のように出題される。スプライシングの過程や遺伝子の組換え実験は頻出である。複数の制限酵素を用いて遺伝子を切り離して遺伝子組み換えする題材は新課程以降のブームとなっているため、しっかりと実験の流れを掴んでおこう。
3.4 生殖と発生
真皮の誘導、中胚葉誘導、誘導の連鎖などの頻出事項は最低限抑えておこう。旧課程同様、考察問題が出しやすい分野であるが、考察実験を軸にした出題が多い。過去に真皮の誘導実験や中胚葉誘導が出題されているが、結果を知っている受験生は容易に解答にたどり着けたはずである。発生は新課程から新出単語がかなり増えた単元でもある。母性効果因子やBMP、中胚葉誘導と誘導タンパク質の関係、間充織と上皮の分化などを重点的に再確認しておこう。
3.5 遺伝
久留米大学の遺伝の計算は非常に簡単なので、遺伝に苦手意識のある人もしっかり対策しておくことをお勧めする。胚乳遺伝や自家不和合性など難度の高い遺伝が聞かれるわけではなく、専ら二遺伝子雑種の独立、連鎖型(不完全連鎖)の問題が出題されることがほとんどである。年度によっては家系図を使って、遺伝病の様式を特定させたり、親族の遺伝子型を決定させるような問題も出題されているが、特段難しいわけではなく、セミナーやリードαの問題をこなしておけば十分対応できる。
3.6 動物の反応と行動
私立医学部は生体に関する出題が多いが、久留米大学に関しては常に出題されるとは限らない。また、マニアックな知識を聞いてくることも少なく、基本的には教科書の太字レベルの出題なので対策しやすいであろう。
3.7 植物の環境応答
植物ホルモンや花芽形成の2大分野を筆頭に出題が続いている。光条件の考察実験や植物ホルモンの作用は試験前にしっかり確認しておく必要がある。発生の単元同様、青色光受容タンパク質やオーキシン輸送タンパクなど新出単語が多く注意すべき単元である。
3.8 生物の多様性と生態系
生命の起源と進化、生物の系統と合わせて、必ず出題がある分野である。受験日程のギリギリになって対策するなどはしないようにしよう。種間競争の問題を中心とした出題が多い。
3.9 生命の起源と進化、生物の系統
毎年よく出題される。地質時代や動物界の分類、分子時計の計算、ハーディーワインベルグの計算は頻出である。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
■Step.1 用語、定義の確認
久留米大学はマニアックな単語を詰め込む必要はなく、全て教科書太字の知識を聞いてくる。基本単語は、問題を見た瞬間にアウトプットできるまでにブラッシュアップしてほしい。既に述べたように、難しい単語は問われないので重箱の隅をつつくような勉強までは必要ないだろう。
〇参考書
『チャート式 新生物、生物基礎』(数研出版)
『大森徹の最強講義』(文英堂)
『大学入試の得点源(要点)』(文英堂)
『生物 知識の焦点』(Z会)
『理解しやすい生物、生物基礎』(文英堂)
『田部の生物基礎をはじめからていねいに』(東進ブックス)
『生物基礎が面白いほどわかる本』(中経出版)
初学者は、いきなり問題を解き始めるよりも参考書や教科書を使って生物現象や用語の定着に努めるほうが効率的である。
用語が定着した後は、問題集でアウトプットしていこう。リードやセミナーを使う際の注意点としては、いきなり発展問題などはやらずに、セミナーのプロセスやリードにあるリードBなど基礎問題の反復練習に努めるほうが効率がよい。
〇問題集
『基礎問題精講』(旺文社)
『らくらくマスター 生物・生物基礎』(河合出版)
『生物用語の完全制覇』(河合出版)
『セミナー 生物』(第一学習者)
『リードα 生物』(数研出版)
『リードlight 生物・生物基礎』(数研出版)
■Step.2 実験、考察問題に取り組む
ここからは、標準問題を軸に実際の考察問題を解いていくことになる。近年の大学入試では、医学部にかかわらず考察問題を中心に問題が構成されることが多いが、久留米大学では独立した小問で考察問題が出されることが多く、加えて実験結果が予測できるようなものばかりである。したがって、対策としては難しい考察問題を闇雲に解くのではなく、標準的な問題を数多くこなし、実験概要と結果をしっかり記憶しておくことである。時間の短縮につながるだけでなく、予測しながら解答をしていくことができるようになるため精神的にも安定する。ニワトリの真皮の誘導や、中胚葉誘導の実験結果など、普段から考察問題をこなしていく上で、ノートなどに実験結果をストックしていくとよいだろう。1周目の取り組み方としては、しっかりリード文を読んで自分で考えて答えを導き出しで見ることである。この時点で完璧な答案を作る必要は全くなく、わからなかった問題は解答解説を理解することを心がけよう。
『セミナー 生物』(第一学習者)
『リードα 生物』(数研出版)
『生物の良問問題集』(旺文社)
『基礎問題精講』(旺文社)
『生物重要問題集』(数研出版)
『生物標準問題精講』(旺文社)
■Step.3 計算問題への取り組み
計算問題は、個別に対策しておく必要がある。セミナーやリードαなどの網羅系問題集にも計算問題は含まれているが、計算問題に対する網羅性はあまりよくない。
『大森徹の生物遺伝問題の解法―合格点への最短距離』(旺文社)
『大森徹の生物 遺伝問題の解法』(旺文社)
毎年計算問題が数問出題されるため、必ず対策しよう。特に、遺伝、神経の伝導速度、ミクロメーター、浸透圧、塩基対数の計算、ハーディー・ワインバベルグの法則、系統樹、生体系に関する計算などは頻出である。 公式を暗記することも大切であるが、公式の導出過程を理解し、忘れないような学習をしていくことが重要である。また、計算問題に関する注意点であるが、計算問題のみが記述であることが多いため、選択肢に頼ることができず、自力での完答が求められる点に注意しておこう。
■Step.4 過去問・模擬問題を用いた演習
Step1~3が終了したら、過去問を解き始めよう。過去問は、できれば夏明け辺りから始めたいところである。もちろん、もっと早い段階で実力がついていれば、過去問に着手してもよい。よく直前期になるまで過去問を解かずに取っておくという話を聞くが、step1を終えたころに一度過去問を解いてみるといいかもしれない。どういった単元が頻出しているのか、難易度はどのくらいか、ということがイメージしやすくなるだろう。
また、過去問を解くときには時間を計るようにしよう。いくら正答率が高くても時間内に解ききれなければ意味がないからである。
久留米大学の正誤問題に関してであるが、あまり類似した問題集がないため、日ごろから久留米大学用のアウトプットとなる教材が少ないのが現状である。過去問を解くと、難しく感じるのはそのためであろう。したがって、傾向を掴み、慣れるためにも過去問をしっかりと解いておくことが望ましい。
(参考)
久留米大学|医学部医学科|3つのポリシー(医学部医学科)
久留米大学|入試結果
久留米大学|入試情報|入試情報|入試日程|2019年度入試日程
久留米大学|入試情報|入試情報|入試概要|入試概要-前期日程
久留米大学|入試情報|入試情報|入試概要|入試概要-後期日程-