目次
- はじめに
- 概要
- 試験日
- 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
- 配点
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 理論化学
- 無機化学
- 有機化学
- 高分子
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
- Step.1 教科書内容の振り返り
- Step.2 知識の補強
- Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強
- Step.4 定番問題の習得
- Step.5 過去問演習
1. はじめに
日本医科大学は日本最古の私立医科大学であり、その入学難易度から、慶應義塾大学および東京慈恵会医科大学と並び「私立医学部御三家」と称されている。「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」を教育理念として掲げており、アドミッションポリシーには以下のような記載がある。
本学では、この学是、理念そして使命を理解・尊重し、豊かな資質を持った次のような人を求めています。
1.医学を学ぶ目的意識が明確で、医師、医学者となるに必要な知識・技能の修得のために自ら努力する人
2.生命倫理を尊重し、医学を学ぶための知識・知性および科学的論理性と思考力を備えた人
3.病める人の心を理解し、相手の立場で物事を考えることができ、主体性を持ちつつ協働して学ぶことのできる人
4.社会的な見識を有し、周囲との協調性を尊重しながら、自らを表現し、判断できる人
5.世界の医学・医療の進歩と発展に貢献する強い意欲のある人
(引用元:日本医科大学|アドミッションポリシー)
2. 概要
2.2 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
(試験科目・試験範囲)
英語:コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ
数学:数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B(ベクトル、数列)
理科:物理[物理基礎・物理]、化学[化学基礎・化学]、生物[生物基礎・生物]の3科目から2科目選択
(試験時間)
英語:9:00-10:30(90分)
数学:11:25-12:55(90分)
理科:14:10-16:10(120分)
(解答形式)
記述・論述式
2.3 配点
英語:300点
数学:300点
理科:400点(200点×2)
2.4 出題の傾向と特徴(概要)
全問記述式で、大問4題から構成されている。大問は理論1題、有機1題はだいたいの年で固定して出題されているが、残りの2題は固定されていない。大問4は、高分子の反応原理やアスコルビン酸のヨウ素滴定など総合的な内容から出題されている。問題全般的に思考力を問う問題から構成されており、医学部屈指の難易度である。大問4題、小問25題程度なので問題数はそれほど多くないが、計算分量は多い。同時に思考力を問われる問題も多いので、時間的な余裕はあまりない。例年、物理・生物の難易度がそれほど高くないので、化学が勝負科目となる可能性が高い。そのため、化学に自信がないと合格は厳しいと思われる。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 理論化学
気体や希薄溶液の性質、化学平衡などをテーマとした問題がよく出題されている。単純に公式に当てはめるような問題は少なく、グラフや表から情報を読み取ったり、文章から考察させるような問題が多く、一筋縄ではいかない。計算問題が占める割合が多い上に、計算分量が多く、綺麗な答えが出ない数値計算も多いので、計算力に自信がないと厳しい。グラフや表から情報を読み取り、化学現象に結びつける訓練もしておきたい。その他、化学現象に関する正誤問題がよく出題されている。なぜそのような現象が起こるのか日頃から考えるような学習姿勢を持つことが重要である。計算問題が難しいので、なるべく上記のような知識で解ける問題で得点を稼ぎたい。
3.2 無機化学
無機だけで構成される問題はほとんど見られない。出題される場合は、ほぼ理論との融合問題である。正誤問題なども出題されるが、単純知識よりは理論的に考察するような問題がよく出題される。普段の学習から無機の反応を理論的に捉えて、なぜこのような反応が起こるのか、このような性質を持つのかという姿勢で学習していないと問題に解答できない。無闇やたらと暗記させるような問題は少なく、整理しながら理解していけば、その過程で覚えてしまうぐらいの知識量で十分である。
3.3 有機化学
有機の問題に関しては、毎年1題出ている構造決定の問題と融合問題として出題されるパターンがある。難易度が高い日本医科大の問題の中で、唯一それほど難易度が高くない問題が出やすいのが有機化学の構造決定問題である。一般的な構造決定の問題が多いので、市販の問題集でしっかりと対策すれば十分な難易度である。出題された場合は、確実に得点を取っておかなければならない。融合問題で出される場合は、難易度が高く、未知の反応と関連させている場合がほとんどである。こちらの問題は、国立上位レベルなので、東大・京大をはじめとする上位国立の入試問題の演習を積んでおかないと厳しい。
3.4 高分子
合成高分子、天然高分子ともに良く出題されている。単純な知識問題よりは、思考力を必要とする問題や計算問題からの出題の方が多い。合成高分子の反応原理などの問題が、その場で考えさせる問題として登場していたり、アスコルビン酸の還元性などの問題も出題されている。高分子の問題に関しては、標準的な問題集1冊だと問題量が不足しているので、こちらも上位国立などの入試問題を使って、しっかりと演習経験を積みたい。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
■Step.1 教科書内容の振り返り
教科書を用意し、1章ずつ読み込む。入試問題は、原則として教科書から出題される。中には教科書から文章をそのままを抜き出したのではないかという問題さえも登場する。特に各教科書の参考・発展・コラム・実験などは、入試問題の恰好の材料になり、出題頻度も高い。日本医科大の特徴は、グラフや表を活用したり、未知のテーマに対して本文中の誘導を利用して解答させるなど思考力が問われる問題構成である。その場で考える力を身に付けるためには、教科書に書かれていることをただ覚えるのではなく、なぜその公式が導けるのか、化学現象を自分の言葉説明できるかなど、理解することを中心とした学習姿勢が求められる。
ただし、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、Step.1では全てを理解する必要はない。この段階では、各教科書の発展やコラムには触れなくても良い。ざっとどんなことが書かれているか整理していくと良い。読んでもすぐには理解できないという人は、下記の紹介されている参考書などを教科書の対応する箇所を合わせて読み込んでおこう。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も1冊用意しておこう。得た知識をどう使っていくのかについては、下記の問題集を利用していく。
○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)
○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)
■Step.2 知識の補強
日本医科大学では、理論・無機・有機・高分子いずれも難易度が高く、オーソドックスな問題は少ない。融合問題が多いことが特徴なので、各単元のつながりを意識して知識を身に付けていく必要がある。知っていないと解けない問題は少ないので、暗記することに重点を置くよりは、理解する流れで自然と覚えていくような形が望ましい。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。
◯理論化学
理論化学の問題では、グラフや表、誘導文などを使った総合力が問われる問題が多い。教科書に登場するグラフもただ眺めるのではなく、なぜこのようなグラフになるのか、グラフから分かることやどのような理論に基づくものなのか意識した学習が欠かせない。暗記する必要はなく、理解しながら自然と知識を身に付けていくことを主に置いてほしい。化学現象に関する正誤問題もよく出題されているので、一つ一つ自分の言葉で説明できるかを考えながら進めていこう。
『化学一問一答』(東進books)
◯無機化学
化学物質の色やにおいを聞く問題のような単純知識で解く問題は少ない。無機は、理論と関連させて出題されるパターンが多いので、知識を身につける段階から無機の反応を理論と結びつけて知識を身に付けて欲しい。
◯有機化学
一般的な構造決定の問題もよく出題されている。官能基ごとの性質や反応、有機化合物の名称や構造式名称は確実に押さえておきたい。融合問題で出題される場合は、その場で思考させる問題が多く、難易度が高い。有機化学では基礎知識の積み重ねが大前提にあるので、まずは一般的な構造決定の問題がしっかりと解けるようにこのStepでは準備してほしい。
◯高分子
高分子に関しては、合成高分子・天然高分子共によく出題されるが、融合問題であることが多いのが特徴である。暗記単元であると思われがちであるが、基礎の部分は有機化学と理論化学である。知識中心になるのでしっかりと覚えるべきところは覚えてほしいが、有機化学と理論化学が根底にあることを頭において知識を身につけていこう。
『鎌田の有機化学の講義 三訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)
■Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強
Step.3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。日本医科大の計算問題は、グラフなどを活用することも多く、思考力が必要な問題が多い。ただし、難易度の高い問題も基本的な問題をいくつか組み合わせて作られているので、まずは標準的な解き方や考え方をしっかりと身につけてほしい。また、全て難しい問題から構成されているわけはないので、標準的な問題を落とさないことも重要である。計算分量も多く、計算結果も煩雑な場合が多いので、時間内に正確な計算を行う馬力も必要である。下記の問題集や参考書を使い、標準的な計算問題の解法を身につけるとともに、計算の正確性やスピードを向上させよう。
『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)
(ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習しよう)
『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)
(入試レベルの計算問題に取り組みたい場合は、こちらの問題集で練習しよう)
■Step.4 定番問題の習得
ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。日本医科大では、難易度の高いテーマから出題されるため、重要問題集や良問問題集のような標準的な問題集に加え、標準問題精講や化学の新演習などの難易度の高い問題集にもしっかりと取り組んでおきたい。その際に、解法の暗記ではなく、なぜそのように考えたのかしっかりと振り返りを行ってほしい。
○問題集
『化学の良問問題集』(旺文社)
○参考書
『化学の新研究』(三省堂)
■Step.5 過去問演習
Step.1-4をクリアしたら過去問演習に入ろう。
『日本医科大学』(教学社)
本Stepでは下記のように過去問演習を進め、現時点での自分の学力を自己分析することを忘れないこと。時間を計って解き、解き切れなかった問題は時間を計らずに最後まで解く。採点後、解説を読み、解き方を理解する。自分には何が足らなかったのか自己分析を行う。自己分析を元に基礎の補強(Step.4)を行い、次年度に進む。
過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析をもとに、同時並行で弱点補強を進めよう。入試本番が近づくと赤本や難しい問題ばかりに手を出したくなるが、大事なことは難しい問題が理解できることではなく、合格点を取ること。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性を磨くことが意外と合格への近道だったりする。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めておこう。
過去問を全て終えたら、東大や京大を始めとする上位国立の入試問題に挑戦しよう。難易度は高いが、差もつきやすく合格への勝負科目となる。本学に合格したければ化学では誰にも負けないぐらいの実力を目指そう。
(参考)
日本医科大学|理念と沿革
日本医科大学|アドミッションポリシー
日本医科大学|受験生情報サイト|平成31年度入試要項