目次
- はじめに
- 概要
- 試験日
- 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
- 配点
- 出題の傾向と特徴(概要)
- 出題の傾向と特徴(詳細)
- 理論化学
- 無機化学
- 有機化学
- 高分子化合物
- 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
- 教科書内容の振り返り
- 知識の補強
- 解法パターンの習得と計算力の増強
- 定番問題の習得
- 過去問演習
1. はじめに
産業医科大学は、福岡県北九州市の私立大学である。産業医学振興財団の助成を受けており、修学資金貸与制度があるため、これを利用すれば私立医学部の中ではかなり安い授業料で通学することが可能である。平成28年現在では、6年間の合計額は30,490,000円であるが、修学資金貸与制度を利用すれば、実質負担額は11,296,800円となる(ただし、卒業後9年間、福岡を中心とした指定医療機関で働くことが条件となる)。
入試は第一次試験と第二次試験に分かれており、一次試験は国語や社会を含めたセンター試験が課される。そのため、実質的には国公立大学に類似しており、英数理に絞って学習してきた人には厳しい試験内容と言える。
2. 概要
2.2 試験科目・試験範囲・試験時間・解答形式
(試験科目・試験範囲)
■1次試験(第1次学力検査)
・国語:『国語』
・地理歴史・公民:「世界史B」、「日本史B」、「地理B」、「現代社会」、「倫理」、「政治・経済」、『倫理、政治・経済』 から1科目
・数学:『数学Ⅰ・数学A』および『数学Ⅱ・数学B』
・理科:「物理」、「化学」、「生物」、「地学」 から1科目
・外国語:『英語』、『ドイツ語』、『フランス語』、『中国語』、『韓国語』 から1科目
■2次試験(第2次学力検査)
・英語:コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III・英語表現I・英語表現II
・数学:数学I・数学II・数学III・数学A・数学B(数列、ベクトル)
・理科:「物理(物理基礎・物理)」、「化学(化学基礎・化学)」、「生物(生物基礎・生物)」の3科目から2科目選択
(試験時間)
■2次試験(第2次学力検査)
10:20〜12:00 数学(100分)
13:20〜15:00 理科(100分)※2科目選択
16:00〜17:40 英語(100分)
■2次試験(小論文・面接)
9:00〜11:00 小論文(120分)
12:20〜 面接(一人約20分間)
(解答形式)
■2次試験(第2次学力検査)
・英語:記述・論述式
・数学:記述・論述式
・物理:記述・論述式
・化学:記述・論述式
・生物:記述・論述式
2.3 配点
■1次試験(第1次学力検査)
国語:60点
地理歴史・公民:60点
数学:60点
理科:60点
外国語:60点
■2次試験(第2次学力検査)
・英語(200点)
・数学(200点)
・理科(200点)
・小論文(50点)
・面接(合否判定の際に重視する。)
2.4 出題の傾向と特徴(概要)
大問が3つか4つの構成であり、1つは小問集合となっている。年度によって大問の傾向は変わるため、分野を絞って対策するのは難しい。一見、高分子の問題であっても、有機の内容が絡んでいたりと、総合的な問題として問われる。どの分野も穴がないようにしておきたい。
3. 出題の傾向と特徴(詳細)
3.1 理論化学
例年大問1.5題程度出題されている。近年では、凝固点降下、溶解度積、コロイド、熱化学、電気分解、気体、濃度、化学平衡、酢酸の電離平衡、弱塩基のpH、酸化還元滴定など満遍なく出題されている。基本的な問題のようで、他分野と複合していることが多い。どの分野も確実に押さえておきたい。
3.2 無機化学
大問1つ出題されるか、他分野と融合した形で出題されている。近年では、ハーバーボッシュ法、イオン化エネルギー、イオン半径、沈殿生成が出題されている。教科書発展内容も含まれるので、隅々まで漏れがないようにしたい。
3.3 有機化学
有機か高分子で1題ということが多いが、有機が2題のときや全く出題されないときもあり、傾向は読めない。近年では、トリグリセリドの構造推定、芳香族の構造推定、アセチルサリチル酸を用いた合成実験が出題されている。構造推定を中心に各反応を理解しつつ、実験時にどういう状態なのかを押さえていきたい。
3.4 高分子化合物
有機か高分子で1題ということが多いが、こちらも傾向は読めない。近年では、6,6-ナイロン、ペプチドの構造推定、アミロペクチンの加水分解、二糖の性質が出題されている。天然有機、天然高分子分野での出題が多い印象である。また、単に高分子分野の知識ではなく、他分野と融合した形で問われる。そのため、未知の内容であっても本文をしっかりと読み解く必要がある。
4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
■Step.1 教科書内容の振り返り
教科書を用意し、一章ずつ読み込む。入試問題は、原則として教科書から出題される。特に各教科書の参考・発展・コラム・実験などは、入試問題の格好の材料になり、出題頻度も高い。産業医科大の入試問題では、なじみのない問題が出題されたり、総合的な内容が問われるような問題がよく出題している。ただし解答に必要な要素として教科書レベルを大きく逸脱するような内容はあまり問われておらず、受験生の実力が反映されやすい入試問題である。各単元のつながりを意識した学習を心掛けてほしい。
ただし、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、Step.1では全てを理解する必要はない。この段階では、各教科書の発展やコラムには触れなくても良い。ざっとどんなことが書かれているか整理していくと良い。読んでもすぐには理解出来ないという人は、下記の紹介されている参考書などを教科書の対応する箇所を合わせて読み込むと良い。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も一冊用意しておくと良い。得た知識をどう使っていくのかについては下記の問題集を利用して、確認していくと良い。
○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)
○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)
■Step.2 知識の補強
産業医科大では、各大問に総合的な内容を問う問題が中心である。知識をやみくもに身に付けるよりは、理解する過程で知識を身に付けるような学習が向いている。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。
◯理論化学
理論分野が数年周期でほぼ万遍なく出題されている。計算問題が中心となっており、理論分野からの知識問題は少ない。知識よりも理解重視で学習を進めて欲しい。気体反応と熱化学の問題を融合するなど、融合問題がよく出題されている。単元ごとのつながりを意識して学習をしてもらいたい。
◯無機化学
無機単独で大問が出題され、ほとんどは理論分野との融合問題である。無機物質の性質をしっかりと理解し、化学反応式は書けるようになっていた方が良い。下記の参考書を知識の整理に役立てて欲しい。
◯有機化学
◯高分子
ここ数年で登場している問題は天然高分子が多い。ペプチドの推定やアミロペクチンの推定など総合力が問われる内容なので、知識よりは理解に比重を置いて学習を行って欲しい。合成高分子の計算問題も出題されているので、その対策もしっかりと行って欲しい。
■Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強
Step.3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。産業医科大では、標準的な難易度と比べるとやや複雑な計算問題が出題されている。ただし、内容としてはそれほど難しい問題が出題されているわけではないので、まずは基本的な化学計算問題の解き方を身に付けて欲しい。計算力を磨く上で、オススメの計算問題集も下記に記載しておく。
『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)・・・ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習すると良い。
『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)・・・入試レベルの計算問題が良いという場合は、こちらの問題集で練習すると良い。
■Step.4 定番問題の習得
ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。産業医科大では、定番問題よりもやや難度の高い入試問題も出題されているが、標準的な難易度の問題も多く出題されており、まずは標準的な問題を確実に解けるようにして欲しい。難易度が高い問題でも考え方や知識のベースが教科書レベルを逸脱しているわけではないので、まずは基本となる解法をしっかりと身に着けることが大事である。量をこなすよりは、なぜその公式を使ったのか、考え方のもとになる部分を丁寧に確認しながら解き進めて欲しい。
『化学の良問問題集』(旺文社)
○参考書
『化学の新研究』(三省堂)
■Step.5 過去問演習
Step.1-3をクリアしたら過去問演習に入ろう。
『産業医科大学(医学部)』(教学社)
本Stepでは以下の手順に沿って演習・復習に取り組めば、ただ普通に過去問を解くということをするよりも数段効果的であるのでぜひ参考にしてほしい:
1. まずは制限時間内で解いてみる。
2. 制限時間が終了した段階でここまでの出来を採点する。
3. 時間が足りずに解ききれなかった問題を、時間無制限で取り組み、答え合わせを行う
4. 自分に足りなかったポイントを列挙する。知識問題で間違えたなら今まで学習した項目のどの部分が抜けていたのか。考察問題で間違えたならどういった視点が足りないのか。時間があれば解けるもののスピードが足りないならどの部分の理解と練習が足りないのかといった観点を大事にしよう。
5. Step.4に戻り、該当単元の演習を再度行った上で、周辺分野の知識をすべて整理する。
過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析を元に、同時並行で弱点補強を進めよう。直前期は基礎的な内容に取り組むよりも難しい問題ばかりに手を出したくなるが、大事なことは合格点を取ることである。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性の鍛錬の方がはるかに合格への近道と言えよう。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めたい。
産業医科大の入試問題は、国公立大学の入試問題に形式が近いため、過去問を全て終えたら、旧帝大などの中上位の国立の過去問を演習題材として活用していこう。余力があれば、東大や京大を始めとする上位国立の入試問題に挑戦していきたい。
(参考)
産業医科大学|入試情報|平成31年度 学生募集要項(医学部 一般入試)